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「ポン菓子の魅力を爆裂させる本」を手がけた(左から)水谷勇貴さん、葛島幹也さん、神谷歩美さん=2025年3月24日午前10時52分、名古屋市西区、松永佳伸撮影

 「この本を読んだら誰かにポン菓子の話がしたくなります」。南山大学2年の水谷勇貴さんと愛知淑徳大学3年の神谷歩美さんが、菓子メーカーへのインターンシップの成果として本を出版した。名付けて「ポン菓子の魅力を爆裂させる本」。製法や歴史、職人たちの思い、食べ方などを若者の視点から紹介し、昔懐かしいポン菓子の魅力を伝えている。

 2人は昨年8月から、創業91年目を迎えるポン菓子製造会社「坂金製菓」(名古屋市西区)にインターンシップで訪れていた。そこで立ち上げたのが「ポン菓子未来クリエイターズ」だ。「ポン菓子の面白さが伝わっていないのがもったいない」と感じていた4代目の葛島幹也社長(38)の発案だった。

「昭和の視点ではなく、若者の視点に期待」

 ポン菓子は、「穀類膨張機」と呼ばれる特殊な機械を使って製造する。釜に米や麦、トウモロコシなどの原材料を入れて密閉して加熱。圧力が高まったところで釜のふたを開放した瞬間、爆発のようなすさまじい音とともに、穀物が大きく膨らむ「爆裂加工」でつくる。初めて開発したのは1901年、米国の植物学者とされる。

 南山大経済学部の水谷さんは幼少期から祖父母とポン菓子を食べた記憶があり、原体験となって今回のプロジェクトに携わることを決意した。

 爆裂加工の仕組みやポン菓子に関わる人たちへのインタビューを通して「単なるお菓子ではなく、日本人の生活に根付いた文化としてのお菓子」と考えるようになったという。

 ポン菓子を知らなかった愛知淑徳大交流文化学部の神谷さんは、好きな読書を通して、ポン菓子の魅力を発信する活動に興味を持ち、社会経験を積むために参加した。素朴な甘みにひかれ、いまでは朝食には欠かせない存在になっている。

 葛島社長は「菓子メーカーの視点や昭和の人間の視点ではない、若者の新しい視点に期待をしたかった」と話す。

「楽しくて面白いポン菓子を身近に感じて」

 2人は、出版社から取材のいろはや執筆の指導を受けながら、ポン菓子の製造方法や誕生物語、製造に携わる人たちへのインタビューなどをまとめた。

 ポン菓子が100倍おいしくなる食べ方3選では、牛乳やヨーグルトをかけたシリアル風▽チョコレートやドライフルーツを使った「シャレチョコポン」▽カツオ節をまぶした和風味を紹介している。

 SNSを活用したアンケートでも50~70代の8割以上がポン菓子の爆裂加工を実際に見たことがあると答えた。「どんなシチュエーションで食べるか」という問いでは、「ひとりでまったり楽しむ」と「家族だんらん」がほぼ同数だった。

 水谷さんは「爆裂加工の面白さや安心して食べられるポン菓子は世代を超えて人々をつなぐ力がある」と分析する。

 本の完成を記念し、3月17日には南山大学で「ぽんフェス」を開催。学生ら約30人が参加し、トークセッションでは葛島社長らがポン菓子の魅力を紹介したほか、ワークショップではオリジナルのポン菓子ギフトづくりを楽しんだ。

 ポン菓子の魅力について、神谷さんは「素朴な味でありながら、謎が多く掘り下げていくと面白さがわかった」、葛島社長は「本を通してポン菓子のファンになってほしい。楽しくて面白いポン菓子を身近に感じてほしい」と話す。

 本はB6判、148ページ。300部を作製し、出版に協力した人たちに配布した。アマゾンで販売している。価格は1冊1200円(税込み)。

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